Wonderful DaysⅠ
「───マリア?」
ボソッと、呟くように口ずさんだ声に。
修さんに向けていた視線をカイさんに戻すと、私を見て固まっていた。
「………………?」
何で固まってしまったのかわからない私は、首を傾げるしかない。
「あの……どうかしましたか?」
私の声にハッとして、我に返ったカイさんは
「お前、マリアって名前なのか」
何事もなかったかのように聞いてきた。
───はっ! 私ってば、此処まで連れて来てくれた恩人さんにまだ名前すら名乗ってなかった!
「名前も名乗らずにすみませんっ! 私、周防マリアって言います。此処まで乗せて頂いてありがとうございました! このご恩は一生忘れませんっ!!」
深々と挨拶をすれば
「マリアちゃん、一生って。大袈裟だよ」
葵さんが優しく微笑んでくれた。