Wonderful DaysⅠ
「アル君……いつものSPのヴィクトルとグレゴリーが居ないのは何でかな……?」
アル君のSPの中でも凄腕のロシア人の姿が見当たらない。
「あぁ……あの二人なら、俺の代わりにマリアを迎えに行ってるからな」
アル君の言葉に背筋が凍る。
「え…マジで?」
紅茶を飲みながら質問に答えるアル君と、それを聞いて頬が引き攣る俺。
───そんな事したら、折角のサプライズが台無しになるじゃないかっ!!
「ちょっと、アル君!!」
何とか魁君のデートを許してもらおうと、声を掛けた時だった。
アル君の胸ポケットにあったスマホが呼び出しを告げる。
それをスマートに取り出したアル君は耳に当てると
「Hello.」
話し始めて直ぐに顔を顰めて不機嫌になった。
暫く英語で話をした後に、通話を終了させたアル君は
「信じられない……あの二人が撒かれるなんて……」
額に手を当てて、ソファーの背に凭れた。
その様子から、どうやら魁君は凄腕のSP二人を上手く撒いたらしい。
───ナイス、魁君っ!!!
俺は、アル君に気付かれないように小さくガッツポーズをした。