Wonderful DaysⅠ
どうしたんだろう?
「───チッ……」
その瞳に何かを捉えたのか、舌打ちをした魁さんの眼光が鋭くなる。
「魁さん…?」
魁さんの視線を追おうとすれば
「───行くぞ」
再び手を引かれて歩き出した。
その後姿は、さっきまでの穏やかな空気を掻き消して、いつものピリピリしたオーラを纏っている。
さっきよりも足早に歩く魁さんに、何かあったのかと口を開こうとすれば
「───うぜぇ……」
ぼそりと呟いた、不機嫌な声。
───か、魁さんの機嫌が悪くなってる……
何で?
思考を巡らしている間にも、魁さんはどんどん混雑する駅の方に向かって進んでいた。
「撒くか……」
その言葉と同時に右手をグイッと引かれて、私の手を離れた魁さんの左手はそのまま私の腰を捕らえた。