Wonderful DaysⅠ
顔面蒼白になった、私の顔を覗き込んでくる魁さんに
「私の荷物全部、慧さんに預けたままなんです!」
今まで、すっかり忘れていた事を伝える。
魁さんに手を引かれたままホテルから出た私は、財布も家の鍵も制服の入った紙袋も鞄も全~部置いて来てしまっていたのだった。
これじゃ、何も買えないし家にも入れない……
今日は修さんも留守だし、アル兄さんなんて食事をしたら帰国予定なんだから。
そんな、私に魁さんは
「今は無くても、別に困らないだろ?」
何でもないかのように言う。
───何を仰っているんですか、魁さん?
「いや、お金と家の鍵が無いと非常に困るんですが……」
お金が無ければ、買い物も、それこそ食事だって出来ないじゃん!
「鍵は後で慧から受け取ればいい。金って、何か欲しい物でもあるのか?」
「いえ、欲しい物は特に無いんですけど、ご飯……」
私の言葉に顔を顰めた魁さんは
「お前から、金なんて取らねぇよ。元々、兄貴との食事から俺が連れ出したんだから」
そう言って、中々動かない私の手を優しく握ると歩き始めた。