Wonderful DaysⅠ
確かに、あのままホテルに居れば、今頃はアル兄さんと美味しいご飯を食べている最中だろうけど。
でも、そしたら魁さんと手を繋いで此処を歩く事も無かったわけで……
私としては、こんな嬉しい想定外の出来事に、神様に感謝したいくらいなんだから。
「何が食いたい?」
その瞳に私を映したまま尋ねてくる魁さんに「魁さんは?」って聞こうとしたところで、鼻腔を擽る甘い香りに思わず振り向いてしまった。
「……あれが食いたいのか?」
私の視線を辿って魁さんが向いた先には、とても魅力的なスイーツ店があった。
「とっても食べたいですけど……」
後ろ髪を引かれる思いで頭を横に振れば
「今日は時間が無いから、あれはまた今度な」
魁さんの口から発せられた言葉に、勢いよく振り返ってその瞳を凝視してしまう。
「今度……?」
魁さんがまた連れて来てくれるの?
「あぁ、近い内に。クックッ……だから、取り敢えず飯な?」
私が余程、真剣な表情をしていたのか……
笑いを堪え切れない魁さんは、面白そうに言うと優しく微笑んだ。