Wonderful DaysⅠ
「は、はい! ありがとうございます」
お礼を言ってその紙を受け取ると、コートの内ポケットの奥に落とさないように入れた。
───嘘みたい……魁さんの番号ゲットしちゃった!
今までは偶然会うだけで、会いたくても会う手段が無かったけど……
これで魁さんと接点が持てたと思うと、嬉しくて笑顔が戻らない。
魁さんの隣でニコニコしながら歩いていれば
「慧に電話するから待ってろ」
そう言ってエレベーターの横に設置されているベンチに私を座らせて、スマホを取り出した魁さんは電話をかけた。
「──…俺だ」
慧さんと話を始めた魁さんは、ベンチから少し離れて行く。
その後姿を見ながら、コートの内ポケットに入れた紙を取り出してみた。
それをそっと開いてみると“K.Y”と書かれた字が見えて、その下に電話番号が書かれている。
───はぁ……本当に魁さんの電話番号なんだ
「嬉しい……」
ドキドキする胸に、紙を握り締めた手を当てていれば
「あ?」
突然、不機嫌な声が私の耳まで届いた。
その声に、思わず視線が魁さんを追ってしまう。
───慧さんと話しているんだよね?