Wonderful DaysⅠ



それにしても……


───これから、何処に行くんだろう?


外に出た私達は、駅とは逆方向に向かって歩いていた。

慧さんに電話していたから、てっきりホテルに戻って荷物を受け取るのかと思っていたけど、どうやら違うみたいで。

修さんの家と学校の往復くらいしか道を覚えていない私にとって、駅周辺は未知の世界。


駅の周辺だからなのか、8時を過ぎても道路を走る車の数はまだ多くて、行き交う車のヘッドライトが魁さんの横顔を照らしている。

何て声をかければいいのかわからなくて、通り過ぎて行く建物や車をなんとなく見ながら歩いていると、頭上から大きな溜め息が聞こえた。


───溜め息?


もしかして、私と一緒にいるのが退屈なのかもしれない……

だって、外に出てからまだ一言も喋ってないし。

でも、男の人と二人きりで何の話をすればいいのかもわからない私にとって、結構…いや、かなり無口な魁さんとどんな話をすれば会話が続くの?

そんなの、ハードルが高過ぎて無理。

あぁ…男の人と普通に会話できる女の人を尊敬しちゃう。

この沈黙が怖いよーっ!

なんて思っていれば


「……マリア」


二人分の靴音に混じって私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


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