Wonderful DaysⅠ


ハッと気が付いて、つられるように時計を見れば7時半になっていた。


「ち、遅刻っ!」


残りのオレンジを口に放り込んで紅茶を一気飲みする。


「・・・・」


そんな私をポカンと口を開けて見ていた修さんは苦笑い。


「行って来ますっ!」


鞄を手に取って急いで玄関に向かえば


「マリア、メガネ忘れてるよ」


後ろから追い掛けて来た修さんに必需品のメガネを渡された。


「ありがとうございますっ!」


玄関の鏡を見ながらメガネを掛ける。

毎日の事ながら、視力がいいのにこんなメガネを掛けるから視界が歪む・・・

眉間に皺を寄せて視界が慣れるまで暫し待つ。

そんな私を見て


「そのメガネやめれば?」


修さんが顔を顰める。

慣れてきた視界に数回、瞬きをして修さんを見ると溜め息を吐かれた。


「そんなメガネを掛けてたら視力が悪くなるよ」


修さんの言いたい事はよくわかるけど・・・


「私、メガネこれしか持っていないんです」


そう言い残して返事を待たずに玄関を出た。


パタンと静かに閉じた扉を見ながら


「全く・・・」


呟いた修さんが難しい顔をしていたのを私は知らない───

< 44 / 757 >

この作品をシェア

pagetop