Wonderful DaysⅠ
『…どうした?』
二度目のコール音で出た相手。
電話の向こうから聞こえてくるのは葵の声。
「田中から話は聞けたか?」
葵は先程、車から連れて出した田中から話を聞いていた。
『一応…ね……』
その歯切れの悪い返事に、納得のいく回答ではなかったのだと推測できた魁は顔を顰める。
「……で?」
話の内容を促せば
『んー…一言で言えば、英語しかわからないマリアちゃんにテンパッたらしいよ。
本当かどうかは、わからないけど……
蓮が重盛にも状況を聞いたけど、田中がマリアちゃんに話しかけたのは飲み物を渡す時の「プリーズ」だけだったらしいよ?
そのまま固まって動かない田中が、もう一度マリアちゃんに話しかけようとしたところを引き離したって言ってたし…』
「…もう一度、話し掛けようとしてた…?」
葵の説明に眉間の皺を深くした魁は、先程のマリアの様子を思い起こしていた。