Wonderful DaysⅠ
『──…マリアの事なら、断るぞ』
「マリアに関する事ですが、マリア自身の事ではありません……緊急なので、要件のみお聞きします…──」
電話をしている魁は、険しい顔のまま相手と話をしていた。
神威のメンバーはバイクのエンジンを止め、会話の邪魔にならないように、それを遠巻きに見ている。
『──…その件はこちらでも早急に調べておく。それよりも……約束は守っているんだろうな?』
要件を聞き終えて、会話を終了させようとした魁の耳に届いたのは相手からの確認事項。
「──…もちろん。やっと、アイツと再会できたのに婚約破棄にされたら堪りませんから」
いきなり低くなった魁の声を聞けば、喉の奥で笑う声が電話口から漏れる。
『──…クックッ……素直だな。マリアを頼んだぞ、魁』
「妻を守るのは、夫の役目ですから」
『…まだ、妻じゃないだろ……』
魁に負けず低くなる声に
「直ぐですよ……あと、一年。」
噛みしめるように紡がれた言葉は、夜の闇に浸透していく……