Wonderful DaysⅠ
「……で、どうしようか。蓮からの報告だと、アイツ等がホテル前で待ち伏せしている可能性が高いよ?」
魁の傍らで眠るマリアを微笑ましく眺めていた葵だが、今現在進行形の問題を切り出すと自然と視線が鋭くなる。
「──…だろうな……」
小さく溜め息を吐く魁は、マリアに視線を向けたまま呟いた。
「マリアちゃんが眠っていてくれて、良かったかもしれないな……
まさか、自分がまた族から狙われてるなんて思いもしないだろうし」
「──…あぁ。これ以上、マリアを不安にさせたくはない」
言葉を交わす二人は眉間を寄せ、スヤスヤと心地良さそうに眠るマリアを心配そうに見つめる。
「取り敢えず、一旦、此処を離れよう。煩いハエを撒かないと何処にも行かれない……」
「あぁ……頼む」
魁の返事を確認し、窓を軽くノックする葵。
それを合図に運転席に乗り込んだ重盛とバックミラー越しに視線を合わせ
「……出せ……」
短く命令すれば
「はい」
葵の言葉に頷き、漆黒の高級車を音もなく滑るように発進させた…───