Wonderful DaysⅠ


「みなとみらい」を離れれば華やかなイルミネーションは消え、オレンジ色の淡い光を発する街路灯が一定の間隔で道路を照らすだけ。


その道路を静かに疾走する一台の黒塗りの車。


まるで暗闇と同化したかのような漆黒のボディは、街路灯の光に照らされる度に黒光りしていた。


「そっちはどうだ?」


車外の雑音が遮断された空間に、静かに広がる葵の声。

その手には通話している携帯の他に、もう一台のスマートフォン。

会話をしながらも、反対の手で器用にスマートフォンを操作していた。

せわしなく動いているその手が止まったのは数秒後。


「──…わかった」


折りたたみ式の携帯を閉じて窓の外へと視線を流した葵。


その視線の先には、漆黒の車体とシンクロするかのようにピッタリと寄り添う真っ赤なボディのバイクが映る。



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