Wonderful DaysⅠ
パワーウィンドウのスイッチを押せば、ゆっくりとスモークのかかった窓が下り、街路灯の明かりが薄らと車内に差し込む。
それと同時に暖かい車内には、頬を刺すような冷気が流れ込み、あっという間に暖気を奪い取っていった。
「殆どは撒いたらしいが、まだ煩いハエが二、三匹うろちょろしているみたいだ……」
視線のみを並走するバイクに向ければ、ヘルメットを被っていない男の赤髪は街路灯の光が当たる度にバイクのボディと同じようにキラキラと輝く。
「俺に任せろ……」
にやりと口角を上げて金色の瞳を細めると、スピードを落とし後ろへと下がっていく。
それに気づいた後続を走る仲間の一人が、併せるようにバイクを寄せた。
「──重盛……」
「承知しています」
次の行動を予測済みなのか、運転手の重盛の名を呼べば当然のように返ってくる返事。