Wonderful DaysⅠ
───1時間後───
根岸森林公園。
駐車場を照らす外灯の明かりが当たらない一角。
薄暗いその場所で、暗闇に紛れるように佇む漆黒のボディ。
エンジンが掛かったままの車体の傍らには、先程と同じように運転手の重盛が周囲を警戒しながら立っている。
その隣には、いまだ熱を帯びたままの真っ赤なバイクが寄り添うように止まっていた。
「んで、どうするよ?」
自動販売機のボタンを押しながら尋ねる蓮は、受け取り口から取り出した缶のプルトップを指で引いて、熱めのコーヒーを喉に流し込む。
ごくりと咽下すれば胃に染み渡り、冷え切った体が少し温かくなる。
ホッと息を吐くと、白い吐息が寒空へと静かに舞い上がった。
「取り敢えずは、予約したホテルはキャンセルした方がいいだろうな。今から戻るのは危険すぎるぞ、魁」
缶コーヒーを飲む事無く手に持っていた葵は、隣に座る魁へと視線を向ける。