Wonderful DaysⅠ


ベンチの背凭れに背を預け、足を組んでいる魁は


「あぁ、ホテルに戻るつもりはねぇよ……」


深い溜め息を吐いて、少し離れた漆黒の車を見遣る。

そこには、未だ深い眠りについているマリアが居た……


「じゃあ、どうすんだ? 今から、別のホテルでも予約すんのか?」


飲み終えたコーヒーの缶を、ゴミ箱に投げ入れながら蓮が尋ねれば


「いや……それも張られてると思った方がいい……」


葵がその案に難色を示す。

それもその筈で……

一体、誰が何の目的でマリアを狙っているのかも把握出来ていない状況で、迂闊に行動する事が出来ないのだ。


「なら、此処で皆仲良くお泊りか?」


蓮が顔を顰めれば


「──いや……」


ぽつりと呟いた魁の言葉に葵と蓮の視線が集まるが、その先の言葉が続く事はなかった。


「魁……?」


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