Wonderful DaysⅠ
低く落とされた言葉に首を傾げる。
「熱……?」
思わず、私も日本語喋っちゃったよ……
誰が? なんて聞かなくても、私の額を押さえている時点で私の事なんだろうけど。
さっきまでの体調の良さから比べれば、確かに足元はフワフワしてるし、頭も痛くてボーっとするし、寒くて震えも止まらない。
───でも、何で急に?
「マリアちゃん、熱あるの?」
魁さんの後ろから聞こえた声に視線を向ければ、魁さんの肩越しに覗き込んでくる葵さん。
「あぁ……」
険しい表情の魁さんは、なぜか舌打ちをして
「重盛、車……」
重盛さんに声をかけると「はい、直ぐに……」と言って、私が降りた後部座席のドアをスッと開けてくれる。
それをボーっと眺めていれば、ふわりと反転する視界。
「わっ!!」
目の前に現れた魁さんの顔に、思わず大きな声を出してしまったけれど、全く気にしていない様子で車に乗り込む魁さん。
そう……私は今度こそ、女の子の誰もが憧れる「お姫様抱っこ」をされていた。