Wonderful DaysⅠ


低く落とされた言葉に首を傾げる。


「熱……?」


思わず、私も日本語喋っちゃったよ……

誰が? なんて聞かなくても、私の額を押さえている時点で私の事なんだろうけど。

さっきまでの体調の良さから比べれば、確かに足元はフワフワしてるし、頭も痛くてボーっとするし、寒くて震えも止まらない。


───でも、何で急に?


「マリアちゃん、熱あるの?」


魁さんの後ろから聞こえた声に視線を向ければ、魁さんの肩越しに覗き込んでくる葵さん。


「あぁ……」


険しい表情の魁さんは、なぜか舌打ちをして


「重盛、車……」


重盛さんに声をかけると「はい、直ぐに……」と言って、私が降りた後部座席のドアをスッと開けてくれる。

それをボーっと眺めていれば、ふわりと反転する視界。


「わっ!!」


目の前に現れた魁さんの顔に、思わず大きな声を出してしまったけれど、全く気にしていない様子で車に乗り込む魁さん。


そう……私は今度こそ、女の子の誰もが憧れる「お姫様抱っこ」をされていた。


< 462 / 757 >

この作品をシェア

pagetop