Wonderful DaysⅠ
「家って……大丈夫なのかよ?」
耳に圧がかかったように遠くで聞こえる葵さんの声。
かなり慌てているようにも聞こえるけれど……
「下手にセキュリティーの弱い場所に連れて行くよりは安心だろ?
それに今日は、あいつが家に居る筈だから病院に連れて行くより早い」
───あいつ…?
「あぁ……今日は響(ひびき)さんが居るのか……」
───“響さん”って誰?
初めて聞く名前の人。
葵さんも納得したのか、それ以上言葉を発しなかった。
それからは、沈黙が流れている車内。
聞こえてくるのは、荒くなってくる自分の呼吸音だけ。
熱が上がってきたせいなのか、目を開けているのも辛くて閉じていた。
時折、魁さんの左手が私の頬に触れて熱を確かめているのがわかる。
「もう少しで着くからな……」
意識が途切れる前に聞こえたのは、魁さんの心配そうな声だった。