Wonderful DaysⅠ


その零れ落ちた涙の後を追うように触れた指先の感触に、もう一度瞼を持ち上げた。

涙で滲んだ視界に最初に飛び込んできたのは、男の人とは思えないほど綺麗な長い指先。

指先は濡れていて、何も考えずにボーっと、その動きを追っていた。


「──…マリア……」


耳に届いた声に、指先からゆっくりと視線を流していけば、心配そうに覗き込んでくる魁さんがいた。


「…魁……さ……」


声が掠れてしまって、ちゃんと聞こえたかはわからなかったけど


「声は出さなくていい。体、辛いか?」


魁さんには、ちゃんと伝わっていたみたい。

声を出さなくていいと言う魁さんに無言で頷くと、汗で額に張り付いた前髪をそっと指先でよけてタオルで拭いてくれる。


───あぁ、そうか……


私、熱出して魁さんに誰かの家に運んでもらったんだっけ?

……って、誰の家に?


働かない頭で、そんな事を考えていれば


「おい、魁。 患者の診察が出来ねぇから、そこ退け!」


反対側から、知らない男の人の声が聞こえた。


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