Wonderful DaysⅠ
注射が痛くないなんて嘘みたい……
「ね? そんなに痛くなかったでしょ?」
点滴の液の落ちてくる速度を調整しながら聞いてくる先生に、まさか「魁さんの顔に見惚れてて、針を刺されたのに気付きませんでした」なんて事は恥ずかしくて言えなかったから、苦笑いで返しておいた。
「さて……点滴は2時間くらい掛かるから、ゆっくり寝てていいよ」
先生の声に、こくりと頷くと点滴を打っている腕にもシーツをそっとかけてくれる。
───2時間か……
点滴ですっかり忘れていたけど、まだ熱が高いせいか目の奥まで熱く感じる。
目を開けているのが段々と辛くなってきて、ゆっくりと瞼を閉じれば
「……おやすみ、マリア」
意識が途切れる直前、耳元に届いたのは魁さんの優しい声で。
その声を聞きながら、私の意識は再び沈み込んでいった…───