Wonderful DaysⅠ
その声に、さっきから煩い心臓は、更にその動きを増して脈動する。
視線の先では、先生がこっちに駆け寄ってくるのが見えたけれど、私の意識は耳元で聞こえた声に向いていて。
重い頭をゆっくりと動かして振り向けば、心配そうに覗き込む魁さんが視界いっぱいに映った。
「マリア?」
「…魁さ…ん……」
───本当に?
本当に魁さんが“ゆう君”なの?
でも、魁さんには暁さんがいるんだよね?
やっぱり、私の都合のいいように考えていたのかな……なんて考えていれば
「お前、こんな所で何やってんだ」
少し怒っているのか、眉間を寄せた魁さん。
何やってるんだ……って、そんなの
「お…手洗い……」
に決まってるじゃないですか。
「…………」
私の答えには無言で額へ触れると、何故か舌打ちをした魁さんは
「──…響」
「はい、はい」
すぐ傍まで来ていた先生を呼んだ。
触れられた魁さんの冷たい手が気持ちよくて、無意識に瞳を閉じれば
「また、熱が上がってきちゃったな…」
先生の呟く声が聞こえる。
───熱? やっぱり、上がってたんだ……
どうりで体が鉛のように重いし、頭もボーっとするはずだ。