Wonderful DaysⅠ
「マリアちゃん、大丈夫か?」
聞きなれない声に閉じた瞼を持ち上げれば、片膝を突いて先生の横から様子を伺っている男の人が視界の端に映る。
初めて見たその顔は、魁さんとよく似ていて、一目で魁さんのお兄さんだとわかった。
「んー、ダメだね。また、熱が上がってきた……」
先生の言葉に、難しい顔をしたお兄さんは
「そうか……じゃあ、マークには熱が下がるまでは家で預かるって俺から連絡しておくよ」
耳を疑うような言葉を吐いた。
───今、マークって言った!?
ボーっとしていた頭は“マーク”と言う言葉で、一気にフル回転を始める。
「あぁ、頼む」
お兄さんの言葉に頷いた魁さんを、思わず凝視してしまう。
───嘘っ?! まさか、迎えに来る兄さんってアル兄さんじゃなくて、マーク兄さんだったのっ?!
恐ろしい事実に、サーッと血の気が引いていく。
「取り敢えず、部屋に戻るぞ」
青褪める私を抱き上げると、お父様達の方を一瞥した魁さんは、来た道を先生と戻り始めた。