Wonderful DaysⅠ
エンゲージリング
◇
(side:響)
再び高熱で寝込んでいる彼女の診察を終えて、ぐっすりと眠っている間に点滴の処置を施す。
ポタポタと落ちてくる輸液の速度を調節して、目の前のアイツに視線を投げれば
「───何だよ」
それに気づいた魁が、不機嫌そうに俺を睨んだ。
「いや、お前も色々と大変なんだなぁ…って思ってね」
「…何の事だ」
何の事を言われているのか、わからない魁に
「さっきの事。喉まで出掛かったのに、自分の婚約者は彼女だって言えないもどかしさ…とかさ?」
「……あぁ…」
俺の言葉に納得した魁は、俺から視線を外し彼女を見遣る。
解熱剤が効いてきたのか、すやすやと眠る様子を見てホッとした魁が、小さな息と共に笑みを零した。
その表情は、普段は見せない穏やかなもので。
最初にそれを目の当たりにした時は、流石の俺でも凝視したまま固まった。
三日前、彼女を抱えて部屋に飛び込んで来た姿を思い出す。