Wonderful DaysⅠ
───三日前───
「そろそろ、帰るぞ」
魁の兄貴の煌(こう)へ業務連絡を終えた俺は、リビングの壁に掛けられた時計へと視線を向けた。
既に日付は変わり、真夜中。
「あぁ。忙しいのに、遅くまで悪かったな…」
手渡した書類をテーブルの上でトントンと揃えると、俺に続いて立ち上がる煌。
「明日は休みだから、ゆっくりするさ」
「そうか…」
座っていたソファーの背凭れに掛けておいたコートを手にして、煌と部屋の扉へ向かおうとした時。
バタンという音と共に凄い勢いで入って来た人物は、その腕にコートに包まれた女を抱えていた。
「魁!? 一体、どうしたんだ」
俺よりも先に声を上げたのは煌で。
「話は後だ。響、マリアを診てくれ!」
「は? マリアちゃんだって!?」
魁の口から出た名前に、固まる煌。
珍しく慌てた様子の魁に驚きを隠せないが、病人らしいマリアと呼ばれた女に視線を向ける。
コートから覗く顔に、零れ落ちるハニーブラウンの長い髪。
見るからに日本人じゃない、その容貌。
「魁…この子は、もしかして?」
「あぁ…俺の───。」