Wonderful DaysⅠ
「インフルエンザ?」
「そ。インフルエンザ。まだ熱が上がるから、早く暖かいベッドで寝かせた方がいい」
そこまで伝えると、彼女を抱き上げた魁は
「兄貴、イギリスに連絡頼む」
「イギリス? 周防さんじゃなくてか?」
「今日は、家に誰も居ねぇんだよ……」
「イギリス……マークか」
「あぁ」
「わかった」
煌の言葉を聞いて歩き出した。
インフルエンザの患者を放って帰る事も出来ず、鞄を手にした俺は魁の後をついて行く。
辿り着いたのは魁の部屋。
キングサイズのベッドにそっと彼女を寝かせ、心配そうに様子を伺っている魁を見て思わず口に出していた。
「お前でも、そんな顔するんだな」
「…………」
無言で俺を一瞥すると、また彼女へと視線を戻していく。
手を動かしながら、その様子を伺っていれば
「───何だよ」
俺の視線が気になるのか、彼女を見つめたまま抑揚の無い声で呟いた。
「いや……突っ込み所満載なんだけど。
何で、イギリスに住んでる筈の婚約者が日本に居るのかとか、高校を卒業するまでは会えないって聞いてたけど一緒に居るし?」