Wonderful DaysⅠ
今日の魁の格好を見れば、普段は着ないスーツ姿で。
間違いなくデートしていたんだと、簡単に予測できた。
「……マリアは、9月にこっちに転校して来た」
まさか、俺の質問に答えてくれるとは思っていなかったから、驚いて手を止めちまった。
「転校? でも、高校を卒業するまでは彼女に会うの禁止されてた筈だろ?」
「ある条件をのんで、会う事は許されてる」
「何だよ、その条件って…」
「俺が婚約者だと、マリアにバラさない事」
「は!?」
何だよ、それは。
何で自分の婚約者に、そんな事をしなきゃならないんだ?
……って
「ちょっと、待て。まさか彼女は、お前が婚約者だって知らないのか!?」
「あぁ……」
───嘘だろ!?
「はぁ!? 何でまた、そんな条件を出してきたんだよ? ウィンザー家は……」
「マリアの────────」
絶句。
まさか、そんな条件が出されていたとは……
「お前、見掛けによらず苦労してんだな」
思わず、声を掛けていた。
「……別に」
いつも涼しい顔して、何でもそつなくこなす魁。
だが、魁の表情を見る限り、今回の条件は流石に少し堪えているように見えた。