Wonderful DaysⅠ


「あのっ……」


まるで、大事なものを包み込むように抱きしめるその腕は、すっぽりと私の体を覆っていて。


「か、魁さん?」


もぞもぞと動きながら名前を呼べば


「───やっとだ……」


熱い吐息と共に、耳元に吹き込まれた囁き。


「え?」


その表情を確かめるように見上げれば、愛おしそうに私を見つめている魁さんが映った。


「やっと、俺のものだ……」


───どくん……


耳に届いた切ない囁きに、心臓が痛いくらいに反応する。


指が体に食い込むほどの強い力で、ぎゅっと抱きしめるその腕は、私の存在を確認するかのように胸の中に閉じ込める。



< 550 / 757 >

この作品をシェア

pagetop