Wonderful DaysⅠ
俺がイギリスに行ったのは、偶然だった。
「ねぇ、魁君~!」
「………………」
「ねぇ、ねぇ~!」
「………………」
「魁君ってば!!!」
「───なんだよ……」
人が勉強をしている横で、いくら無視してもしつこく俺を呼ぶ声に、初めてペンの動きを止めた。
「や~っと、こっち向いてくれた」
じろりと横に視線を移せば、俺の反応が嬉しかったのか満面の笑みでこっちを見ている慧がいた。
「あのさ? 魁君って20日から年末って何の予定も無かったよねぇ?」
「……何で、そんな事聞くんだよ」
普段は、俺の予定なんて聞かなくても無理矢理連れ出そうとするくせに。