Wonderful DaysⅠ
◇
此処は、イギリスの『リッツ・ロンドン』
今回の渡英は、なぜかクリスマスパーティーに出席する事だったらしい父さんと俺は、既にタキシードに着替えていた。
「なんで、俺が……」
未だ納得出来なくて、ホテルの一室で呟いていれば
「まぁ、そんなに嫌がる事はないだろ?」
ソファーに座り、紅茶を飲みながらこっちを見ている父さんに声を掛けられた。
「華やかな場所は好きじゃない。こういう場には、兄貴や慧の方が相応しいよ」
「慧は、ただ単にパーティーが好きなだけだろ。
それに、今日はクリスマスパーティーだ。お前の好きなケーキもあるぞ?」
「………………」
確かに甘い物は好きだけど。
そんな理由で、イギリスまで来たくない。
「大体、何で態々、イギリスのクリスマスパーティーになんて参加するんだよ?」
「取引会社からの招待でな。毎年23日に行われていたんだが、今年は24日になってなぁ。…と、そろそろ、時間だ」
そう言って立ち上がった父さんは、コートを手にするとドアへと向かう。
その後姿を見て、小さく溜め息を吐いた。
此処まで来てしまったのだから仕方が無いと、諦めた俺もコートを手にして後を追う。
この後、まさかこの年でプロポーズをする事になるとも知らずに……