Wonderful DaysⅠ
食後のデザートもイギリスのクリスマスらしく、ミンス・パイやユール・ログ、クレーム・ブリュレなど数種類のスイーツにフルーツの盛り合わせ。
これでもかって言うほど食べて、皆の食事が終わりそうになった頃を見計らうようにして始まったダンスタイム。
踊る人も踊らない人も、酔った勢いで楽しそうにワイワイ騒いでいた。
そして、パーティーもそろそろ終わりを迎える頃。
一つ、気掛かりな事があった。
「そう言えば、お前、ずっと一人で大丈夫なのか?」
「え?」
「一人で来たんじゃないだろ?」
俺の言葉に、青褪めていく彼女。
「ど、どうしよう!? 捜索願出されちゃうっ!!」
「は?」
彼女の言葉に、思わず口から零れた間抜けな声。
「私、前に迷子になって兄さんに捜索願出された事があるの。
どうしよう……あそこで待ってろって言われてたのに……」
彼女が心配になって覗き込めば、顔面蒼白で。
「あそこって、さっきの場所か?」
俺の言葉に頷いたのを確認してから、辺りを見回す。
「此処で捜索願が出る事は無いけど、俺が連れて行ってやるよ」
彼女を連れ出した場所を見つけた俺は、彼女の華奢な右手を握って歩き始めた。