Wonderful DaysⅠ
そんな俺の考えなんて、知る由もないマリアの手を引いて歩いていれば
「……マリアっ!」
かなり離れた場所から、マリアを呼ぶ声が聞こえてきた。
見れば、初めてマリアを見た時に隣に座っていた男で。
マリアを探していたのか、血相を変えて駆け寄ってくる。
「兄貴か?」
声の主に視線を向けたまま、マリアに尋ねれば「そうです」と答えが返ってくる。
───アイツが、兄貴だったのか……
それを聞いた俺は、改めてマリアに向き直って自分の考えを伝える為に口を開く。
「やっぱり、さっきの提案やめた。」
「え?」
いきなり提案を取り消された事にショックを受けたのか、エメラルドグリーンの瞳には再び影が落ち始める。
それを払拭するように
「お前、日本に帰りたいんだろ? なら、俺の妻にしてやる。」
新たな提案をすれば
「え? つ、妻!?」
驚きを隠せないのか、大きな瞳を更に大きくしてフリーズしていた。