Wonderful DaysⅠ
まぁ、予想通りの反応だよな……
この年で、いきなり「妻にしてやる」って言われて驚かない奴はいないし、なんと言っても今日が初対面。
でも。
今日、此処で何も言わずに別れたら、二度と会う事が出来なくなるかもしれない。
“ウィンザー”
きっと、マリアはあの社長の血縁者だろうから。
貴族との結婚なんて想像も出来ないけど、簡単に話が進まない事ぐらい予測済み。
未だ固まっているマリアに笑みを向けて、繋いでいた右手を離す。
そっと彼女の手の平を広げて自分の首下に指を差し入れれば、指先に触れた固い感触。
それを掴んだ手をグッと引けば「プツッ」と聞こえた音と共に、俺の手からはキラキラと光ったチェーンがついてくる。
握り締めた指輪をマリアの手の平に乗せて小さく息を吐くと、覚悟を決めて言葉を紡ぐ。
「約束。」
彼女の瞳を真っ直ぐに捕らえて、マリアの手を包み込む。
これは、マリアを俺に繋ぎ止める為の桎梏。
正式な結城家の婚約指輪をマリアが持っていれば、いくら貴族と言えども無視は出来ない筈。
「約…束?」
ポツリと呟いたその言葉に頷いて、笑顔を向ける。
───これで、マリアは俺のもの。