Wonderful DaysⅠ
「あなたの名前は?」
視線を合わせていたマリアは、ハッとして俺の名前を聞いてくる。
そう言えば、俺も名前を言ってなかったな……
「俺の名前は、ゆう「マリア!」」
俺の言葉を、途中で遮った声。
マリアと同時に視線を移せば、こっちに向かってくる彼女の兄貴の姿が見えた。
ここまでか……
「時間切れだな……」
「え?」
「忘れるなよ? 高校を卒業したら迎えに行く。」
彼女の手を包み込んでいた両手にグッと力を込めて、額にそっと口づけた。
必ず再開できるようにと願いを込めて……
ちゅっと音をさせて離れれば
「うわっ」
目を見開いて固まっていたマリアの顔は、茹蛸のように真っ赤になる。
その反応に満足した俺は「じゃあな」と声を掛けて走り出す。