Wonderful DaysⅠ
───名前……最後まで伝えられなかったな。
そう思いながら足早に歩いていれば、マリアの兄貴が俺を見据えてやってくる。
擦れ違い様に視線を絡ませて、俺の想いを告げれば
「18になったら、マリアを貰いに行くから」
俺の言葉に驚いて、目を見開くマリアの兄貴。
「は?」
「必ず、迎えに行く」
もう一度、念を押して笑みを浮かべながら通り過ぎて行く時
「おいっ! ちょっ……」
慌てた声が聞こえてきたが、振り向く事無くその場を離れた。
そんな俺達の一部始終を、あの人が見ていたなんてこれっぽっちも思いもせずに……
【完】