Wonderful DaysⅠ
「………………は?」
向かいのソファーに座る慧が、食べていたクッキーをポロリと落とした。
「えっと……も、ももももう一度、言ってもらえるかな?」
どもりながらも、何とか平静を装おうとするその態度とは裏腹に声は震えていて。
明らかに動揺しているその様子を視界の端に映しながら、手にしたティーカップに口を付けて紅茶を一口含んだ。
「だから、魁がウィンザー家のお嬢さんと婚約したんだよ」
もう一度、同じ説明をした父さんの言葉を聞いた兄二人は、目を見開いてフリーズした後、信じられないといった表情で俺と父さんを交互に見る。
「「……………………」」
まぁ、父さんの付き添いでイギリスのクリスマスパーティーに出席しただけだった筈の弟が、帰国した時には既に婚約した後なんて言われたら誰でも驚くだろう。
俺、まだ小学生だし。