Wonderful DaysⅠ
◇
「……………………」
「……………………」
───カチコチカチコチ……
無駄に広いこの部屋で、時計の音だけが耳につく。
あの後。
本社ビルには入らずに、リムジンに乗り込んだマーク・ウィンザーと俺。
彼が運転手に行き先を伝えただけで、後は一言も発する事無く沈黙が続いた車内。
笑顔は消えてガラリと変わった雰囲気に、背筋からは嫌な汗が流れる。
ビリビリと伝わってくる不機嫌なオーラは、車窓から見える景色を眺める事で、なんとか紛らわせていた。
───十数分後───
高層ビルの前で、音も無く止まったリムジン。
「───ついて来い」
ビルの前に立っていた黒服の男がドアを開けると、俺を見る事無く車を降りたマーク・ウィンザーの後に続いて車を降りた。