Wonderful DaysⅠ






「……………………」


「……………………」


───カチコチカチコチ……


無駄に広いこの部屋で、時計の音だけが耳につく。


あの後。
本社ビルには入らずに、リムジンに乗り込んだマーク・ウィンザーと俺。

彼が運転手に行き先を伝えただけで、後は一言も発する事無く沈黙が続いた車内。


笑顔は消えてガラリと変わった雰囲気に、背筋からは嫌な汗が流れる。

ビリビリと伝わってくる不機嫌なオーラは、車窓から見える景色を眺める事で、なんとか紛らわせていた。



───十数分後───

高層ビルの前で、音も無く止まったリムジン。


「───ついて来い」


ビルの前に立っていた黒服の男がドアを開けると、俺を見る事無く車を降りたマーク・ウィンザーの後に続いて車を降りた。



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