Wonderful DaysⅠ
張り詰めた空気の中。
時を刻む秒針の音しか聞こえなかったこの部屋に、ぎしりと革張りのソファーが軋む音が混じる。
ガラスのテーブルに置かれていたティーカップを取り、ゆっくりと口に運んだマーク・ウィンザー。
その流れるような動作に目を奪われていると
「───なぜ、マリアなんだ?」
やっと口を開いた彼は、その碧色の瞳に俺を映す。
「……え?」
「先程も言ったが、君はまだ12歳になったばかりで、結婚を考えるような歳ではないはずだ」
「はい」
テーブルにカップを戻すと膝上に肘をついて、顔の前で手を組んだまま鋭い視線を俺に向けてくる。
「政略結婚でもあるまいし、生涯の伴侶をこの歳で決める必要はないだろう?
それに、これから本当に好きな人が出来るかもしれない」
「……………………」
「それでも君は、何度聞いてもマリアをくれと言う。
……なぜ、そこまでマリアを欲しがる?」