Wonderful DaysⅠ
「……え?」
一瞬、彼が何て言ったのか聞き取れなかった。
「お前の気持ちは、よく分かったと言ったんだ」
俺を見据えるマーク・ウィンザーは、溜め息を一つ吐くと
「───結城 魁」
「はい」
「お前とマリアとの結婚は、取り敢えず条件付きで認めよう」
俺が待ち望んでいた言葉とは、少し違う返事を口にする。
「……条件付き…ですか?」
「あぁ。お前達は、まだ12歳だ。この先、何があるか分からないだろう?」
「………………はい」
「マリアには、絶対に幸せになってもらいたい。その為にも、これから出すいくつかの条件をクリアできたら、その時は正式にマリアの婚約者として認めてやる」
「……………………」
その言葉を聞いて、とてつもない不安が襲ってくる。
この人の言ういくつかの条件って、何個あるのだろうか……
条件自体も難しい事は、安易に想像できる。
顔を強張らせる俺を見ていたマーク・ウィンザーは
「本来ならば、問答無用で断るところだが……マリアが受け取った指輪が正式な結城家の婚約指輪ならば、無下に扱う事は出来ないからな」
口の端をくいっと上げて、その碧い瞳を細めた。