Wonderful DaysⅠ
リビングのソファーに凭れながら、手元の文字を目で追いかけている時だった。
「あれ~? 魁君、まだ勉強してたの!?」
「……………………」
それまで静かだった部屋に、騒がしい奴がやってきた。
軽い足取りで近づいてくる慧からは、女の移り香なのか香水の臭いがプンプンと漂ってくる。
───くせぇ……
不快な臭いに顔を顰めた俺に気づかない慧は
「うわぁ……ま~た、こんな小難しい本なんて読んじゃって」
俺の手から本を取り上げて、心底嫌そうな顔をする。
「───返せ」
それをすぐに取り返し、ぎろりと睨めば
「それ、中1で読む本じゃないよね? マークさんとの約束があるのは分かるけど、少しは息抜きしないと響君みたいにハゲちゃうぞ?」
「……………………」
ふぅ、と溜め息を吐いて響の秘密を暴露し始める。
きっと響がこの場にいたら、慧を殴り倒してるに違いない。
それにしても……
響のやつ、ハゲてたのか。