誘惑HONEY
「……疲れた。」
――翌朝。
俺は、フラフラした足取りで廊下を歩いていた。
朝だって言うのに。
空は快晴なのに…
まるで二日酔いのときのようなだるさだ。
それもこれも…
「寝不足?」
……ん?
聞き覚えのある“女”の声に、心臓がドキリと跳ね上がる。
「やっ…違っ、これは…」
弁解をすべく、慌てて振り返れば…
「……なんだ。木下か。」
そこにいたのは、俺と同じ実習生の木下マミ。
……サチ姉かと思った。
「なぁに?私じゃまずかった?」
首をかしげながら、マスカラたっぷりの睫毛をパチパチさせて。
綺麗に巻かれた髪を揺らしながら、駆け寄って来た木下。
「いや…」
否定しつつも、案外そうでもなかったりする。
苦手なんだよなぁ、コイツ。
「沢木くんって、いつも朝辛そうだよね。低血圧?」
「…まぁ。」
「やっぱりぃ?そんな感じだよねぇ」
まるでキャバ嬢のようなしゃべり方。
フレアでミニの、ファッション性重視のスーツ。
コイツ…
明らかに“学校”にはそぐわない…よな?
まぁ、俺が言うのもなんだけど。