誘惑HONEY



「ハイ、あーん!」


――いつの間にか、昼休み。

俺の前には、フォークに突き刺したたこさんウインナー。

“あーん”って…


「ほら、早く~っ」


しびれを切らして、さらに突き出してくるナオ。

あぁっ、もうっ。


「あー…」


ぎゅっと目を閉じて口を開ければ、スッと入り込んでくるウインナー。


「美味しい?」


うふふっ、と満足げに笑うと、


「次はどれがいい?」


ナオは、再びお弁当箱にフォークを滑らせた。

……勘弁してほしい。





ここは、いつかの旧校舎の一室。

人気のない場所で、人目を忍んでのランチタイムだ。


何も、こんな埃くさいところで食べなくても…

そもそも、別に一緒に食べる必要なくないか?


俺はそう言ったのに…



「一緒に食べないなら、お弁当は作ってあげない」


ナオは主張して。

その上、俺の昼食代まで撤収しやがった。


実習期間はバイトもできないし…



金銭的に苦しい俺は、泣く泣く従うしかなかったんだ。



「ね、龍ちゃん、」



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