誘惑HONEY



“あーん”には満足したらしきナオが、俺の弁当箱を差し出しながら、


「木下先生と、何のお話してたの?」



“笑顔で”聞いてきた。

なんかすっごく怖いんですけど…

しかもなんで、木下?


「朝、お話してたでしょ?ぴったり寄り添って歩きながら、熱ーく見つめ合って…」

「はぁっ?」

「今日は朝からその話題で持ちきりだよ?みんな、あの2人は“そういう”関係だ、って噂してる。」


ガタン、と乱暴に弁当箱を置くと、さらににっこりと笑顔を作るナオ。


……って、おい。

何だよ、その迷惑な噂。


俺の返答を待つことなく、ナオは続ける。


「実習が決まったとき、私、龍ちゃんに言ったじゃない?」

「……?」

「“女子高生”とは距離を持って接してね、って。」


言われた…な。

大真面目な顔で、いかに心配かを力説されたんだ。

そして約束させられた。


必要以上に話すな、とか。
笑いかけるな、やさしくするな、2人っきりにはなるな……etc

万が一、それを守らなかったときは…



「それ、訂正。

“女子高生”&“女性教師(実習生含む)”にするね」




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