誘惑HONEY
……と思ったのに。
「それでさぁ、坂井のオバサンってば、いちいちうるさいわけ」
俺は今、なぜか木下の愚痴につき合わされている。
「“その服装はなんなの?”ってさぁ。悔しかったら着てみろっての」
さっきの店ですでに“泥酔”って感じだったくせに。
なおもアルコールをガバガハと摂取し続けていて…
「あ、着れるわけないか。キャハハ…」
怒ったり笑ったり…1人で勝手に盛り上がっている。
…タチ悪すぎ。
「ちょっとぉ、沢木くんってば聞いてる?飲んでる?」
今度は絡んできやがった。
なんで俺が、こんな役回りを引き受けなきゃいけないんだ?
さっき――
タクシーを捕まえたところまではよかった。
木下を押し込んで、あとは運転手に任せようとしたのに…
「……まだ、足りない」
いきなり覚醒した木下。
「まだ飲むの!帰らないのっ!もう1軒行こう!」
「はっ?ちょっ…」
「運転手さーん、発車してくださーい!」
無理やり俺をタクシーへと引き込みやがったんだ。
そして…
「おかわりくださーい!」