誘惑HONEY


こんなのを連れて“ふたりきり”で飲んだ、なんて知れたら大問題だ。

幸い、木下が行き先を決めている様子はなかったから…

俺は、自分がよく知る店。
バイト先のバーへと運んでもらった。


ここなら、知った顔ばかりだから。

木下との仲を誤解される心配もないし。

万が一、何かマズイ状況になったとしても、マスターが助けてくれるはず…


そう思ったのに。


“…大変だな。”って。
マスターは同情的な瞳で見ているだけで、全然止めてもくれないし。

他のスタッフも、接客に忙しいのか、こっちには目もくれないし…


俺が困ってるって、わかってるはずなのに。

なんて薄情な連中だ。


「それでねー、マミはぁ…」


その間も、止まることなしゃべり続ける木下。


…あぁっ、もう!
ベタベタくっつくな!

鬱陶しすぎる。

意識は朦朧としてるくせに、媚びることは忘れないからなぁ。


ある意味、すごい。



「ねぇ、沢木く~ん。今日はこのまま泊まってかなぁい?帰るの面倒だし…」



はぁっ?

俺は、お前と一緒にいることのほうが“面倒”だっつーの。


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