誘惑HONEY
……何、コレ。
俺、詫びられてたんじゃなかったっけ?
それがなんで、そういう話になるんだ?
寝不足の頭だって、この流れがおかしいことくらいわかるぞ?
……ったく。
「悪いけど…」
木下の気持ち…って言うか、下心には最初っから気づいてた。…見え見えだし。
面倒だから、気づかないフリしてかわしてたのに。
「俺、お前とは…『キーンコーン……』
はっきり言ってやろうと、口を開いた、まさにその瞬間。
タイミング良く鳴り響いたチャイム。
「あ、予鈴!大変。行かなくちゃ」
すぐさま反応した木下。
近くに置いてあった教科書類を慌てて抱えると、
「返事は後でいいから。考えてみて?」
にっこり笑って、パタパタと駆けて行ってしまった。
……ずいぶんとあっさりした引き際だなぁ。
まぁ、待ってるのは坂井先生なわけだから、仕方ないか。
昨夜もさんざん愚痴ってたもんなぁ。
……にしても、朝からどっと疲れた。
俺のほうは確か、1限は空いてたはずだから…
どこかで少し休息しよう。
思いながら、木下とは反対方向に歩き出したとき…
「あれっ?りゅ…沢木先生?」