誘惑HONEY



偶然にも、廊下でバッタリ。

ナオと会ってしまった。


「奇遇ですねぇ」


呑気に言ってるけど…

さっきまた、“りゅ”って言い掛けたよな?

気をつけろって言ってるのに…


「何してんの?」


ここで何も話さないのも不自然だから。

俺は、当たり障りのない会話を振ってみる。


もう授業が始まる時間で。

ナオのクラスは、移動でも自習でもないはずだから。


「ああ。先生に資料室から地図を持ってくるよう頼まれて…」


あー…そっか。
確か、1限は世界史だ。


「1人で?」


地図と言うのは、黒板の横に張り出す大きなもので、時代ごとにいくつかあるはずだ。

いくらなんでも、女の子1人に持って来させるのはひどいだろう。


「男子の日直、お休みだから。」


なるほど。

だったら…


「手伝ってやるよ」


可愛い生徒…ならぬ、可愛い“嫁”にそんなムチャはさせたくない。

どうせ暇だし…


「えっ?ホント?」


喜び全開のナオと一緒に、俺は資料室へと向かった。












「龍ちゃあん!」


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