誘惑HONEY



「…っ、おいっ」


資料室に入るなり、思いっきり抱きついてきたナオ。

慌てて引き剥がそうとしたものの、


「大丈夫。鍵はちゃんと閉めたから。」


さらにぎゅーっとくっついてきた。


閉めた…って。
内側から閉めたって、鍵を使えば外から開くから。

しかも、この資料室。
職員室のすぐ側なんだよ。


「離れろ、って。」

「やぁだ」

「ほら、地図持って行かないと。みんな待って…」

「嘘だよ。」


……はっ?



「地図なんて嘘。世界史は急遽、自習になったの。だから抜け出してきちゃった」


ふふっと笑いながら、ナオは悪戯に俺を見上げた。

……コイツは。


「だから、時間は気にしないで?ついでに場所も気にしないで…」

「おいっ、やめろって」


近づいてくるナオ。


昨夜もさんざん迫ってきたくせに…

まだ足りないのか?


「龍ちゃん…?」


甘ったるい声と、無駄に柔らかい身体。

香水なんてつけてないのに、漂ってくる甘い香り。




わかってるくせに、いつも負けそうになるんだよなぁ…













「……やっぱり、木下先生だったんだ。」


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