誘惑HONEY
「もうイヤ!耐えらんないっ」
……なんで、こういうことになるのかなぁ?
「ヒドイと思わない?マミはマミなりに一生懸命やってるのにぃっ」
数時間後――
裏庭でサボ…じゃなくて、“休憩”していた俺のところに駆け込んできた木下。
なんで俺の居場所を知ってるんだよ?
文句を言う暇もなく、抱きついてきたかと思うと、
「坂井のバカヤローっ!もう、辞めてやるぅ!」
叫びながら泣き出した。
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら、俺の胸に顔をすりつける…って、おい。
「落ち着けよ。つーか、とりあえず離れろ」
俺は、木下の肩を強めに掴んで引き剥がした。
「沢木くん…」
俺を見つめる木下の顔は、見事にぐちゃぐちゃ。
こりゃ、パンダもびっくりだよ。
失礼ながら、笑いそうになってしまったけど…
そんな場合じゃなかった。
「一体、何があったわけ?」
聞かなくても、だいたい察しはつくけど。
「あのね…」
黒い涙をボロボロと流しながら、木下が口を開いた。
ちょうどそのとき、だった。
ガサッ。
後ろの茂みから聞こえた物音。
振り返った俺が見たのは…
「……ナオ?」