誘惑HONEY
「可哀相に…
ナオちゃんってば、毎日ずーっと待ってるのよ。」
「……っ」
「もう1週間でしょ?
あんまり食べてないみたいだし、眠れてないみたいだし…。このままじゃ身体壊して倒れちゃうかもね。」
……そう。あの日、
「実家に帰らせていただきます!」なんて。
どこかで聞いたようなセリフを叫んだ後、ナオは家を出て行った。
そして、1週間経った今もなお、帰って来る気配はない。
学校には毎日来ているみたいだけど…
見事に俺を避けまくってくれているようで…あれ以来、一度も姿を見ていない。
本当に“待ってる”のかどうかも疑わしい。
…とは言え、
ナオがこんなふうに、一方的に拗ねたり怒ったりするのはよくあるものの、
ここまで長びいたのは、さすがに初めてだ。
……ちなみに、
ナオの言う“実家”は、自分のじゃなくてなぜか“俺の”なんだよな。
だからこうしてサチ姉にも筒抜けで、あれこれ言ってくるわけだ。
「原因は何であれ、さっさと仲直りしちゃいなさいよ」
どこまで知っているのか…サチ姉は呆れたように呟いた。
「明日からはまた、“ただの”夫婦に戻るんだから」