誘惑HONEY
「あーっ!沢木くぅん!」
サチ姉と別れて。
おそらくまだ、校内にいるであろうナオを探すべく走り出したとき。
「よかった。マミ、ずっと探してたんだよ?」
……出た。
最終日と言うこともあってか、今日の木下はいつも以上に張り切っている。
メイクも髪も格好も…
雑誌の“おしゃれOL特集”あたりから抜け出して来たみたいだ。
そのパワーを少しは勉学に使えよ…
あの坂井先生でさえも手に負えなくて、ほとんど“お情け”で単位を与えたって言うんだから…相当だよ。
「今日で実習も終わりじゃない?」
俺の冷ややかな視線には全く気づかずに、わざとらしい上目遣いで木下は言った。
「この前の返事、聞いてもいい?」
…ついに来たか。
ナオの手前もあったし、あれ以来、木下のことは極力避けてきた。
「実習に集中したい」と言う最もらしい理由をつけたら、さすがの木下もそれ以上しつこくはこなかったから。
このまま逃げ切ろうと思ってたのに…
「マミ、沢木くんの“彼女”になりたいな。」