誘惑HONEY
「はぁっ?」
コイツ…やっぱり全然わかってないじゃん。
「ね?1回だけでいいからギュッとしてチュッてして?」
言いながら、じりじりと近づいてくるナオ。
俺の腕をしっかり掴んで、まっすぐに迫ってくる。
「ナオ、お前…」
「いいでしょ?」
お得意の“おねだり”ポーズには、さすがに決意が弛んでくるけど…ダメだ。
「ダメ。」
「なんで?」
「あのさぁ…、俺たちはここでは“夫婦”である前に“教師”と“生徒”。
そういうことしたらマズイだろ?」
たとえ実習生と言えど、教え子に手を出したらいけない。
夫婦ってことは隠してるわけだから、第三者から見たらどう思われるか…
何より、公私混同はよくない。
「帰ったら、いくらでもしてやるから…」
数時間後には、同じ家に帰るんだから。
「な?頼むから、ここでは我慢してくれ」
コクリと頷いたナオに、漏れる安堵のため息。
……こんなことが、あと半月も続くのか。